ラッシュのキャリアを網羅した新しいアンソロジー『Rush 50』は、50曲を収録し、約5時間にわたるサウンドの旅を提供しています。このアルバムの中で、特に興味深い瞬間は、2012年の『Clockwork Angels』に収録されている「Headlong Flight」の冒頭部分で、ギタリストのアレックス・ライプソンによるソロが、ゲディ・リーとニール・ピートのユニゾンのベースとドラムで応えるシーンです。この部分は、37年前の「Bastille Day」のパッセージをほぼ正確に再現しており、楽しい回想として聴かせます。『Rush 50』は、多様な音楽的背景を持つバンドの歴史を物語として提示する点が特徴です。
このアルバムは、1990年の『Chronicles』のようなベストヒット集ではなく、リリースされていないトラックも含まれつつ、すべてのスタジオアルバムから引き出された印象的な音楽的回顧録です。バンドの解散後、2020年にピートが亡くなった後初めてのコンピレーションで、四つのCDや七つのLPの形式で提供されています。新たなファンにも熱心なファンにも適した、一つのキャリアの頂点としての役割を果たしています。
特に注目すべきは、1973年にリリースされたラッシュのデビューシングルの初再発です。このシングルには、バディ・ホリーの「Not Fade Away」と、リーと元ドラマーのジョン・ラッツィーによって共作された「You Can’t Fight It」が収録されています。これらの曲は特に目立つものではありませんが、ラッシュの進化の背景を理解する上で重要な手がかりを提供します。
このアルバムは、バンドのメンバー交代やスタイルの進化を振り返る重要な機会を提供し、1970年代中期から後期にかけてのラッシュの成長を丹念に記録しています。特にニール・ピートの加入後、バンドのサウンドは著しく変化し、顕著な音楽的飛躍を遂げています。
『Rush 50』はラッシュの多様なキャリアを再評価するものであり、1980年代以降の過小評価されたアルバムや曲の魅力を再発見させる内容です。最後には、ラッシュの最後のライヴからの未発表トラックが収められており、感情的な瞬間を捉えた証として、このアルバムは単なる音楽的アーカイブを超えたものとなっています。リアルな兄弟関係と共にラッシュの偉大な旅の終わりを祝うものです。