約630年、太陽が砂丘の海の上に照りつけ、キャラバンのラクダが行進する。その先頭には、預言者ムハンマドの友人であるムアウィヤ・イブン・アビー・スフヤンが立っており、彼はスンニ派にとってウマイヤ朝の父として称賛される一方、シーア派には嫌われる存在である。ムアウィヤが主役の2025年のラマダンテレビシリーズは、サウジアラビアのMBCスタジオによって製作され、3年をかけて完成し、1億ドルの予算がかけられた。
このシリーズは、ウマル・イブン・ハッターブのカリフ時代の前後を背景に、ウスマーン・イブン・アッファーンの治世や、イマーム・アリーとの対立を描き、アリーの暗殺で終わる。ムアウィヤの治世へと続き、彼は大シリアの知事として権力を息子ヤズィードに引き継ぐ。だが、歴史的な誤りや宗派間の緊張を引き起こす内容として、イラクやイランで禁止され、エジプトのアル=アズハルも視聴を警告した。
イラクのムクタダ・サドルや著名な知識人たちはこの作品に強く反対し、歴史のナラティブへの政府の独占や、セクト間の分裂を懸念している。イラクの作家ヤシン・ガリーブは、アッバース朝の歴史に対する好意的な視点を示し、ウマイヤ朝に対しては否定的であると指摘。
さらに、イランでも視聴が禁止され、宗教的観点からムアウィヤの描写が問題視された。ムアウィヤを讃えることは、セクト間の緊張を煽る要因になるとの意見が強まっている。
アル=アズハルは、歴史的人物の描写に対して厳しい姿勢を取り、テレビシリーズの作成にあたっては必ず事前のコンサルテーションを求める必要があると主張している。社会的な視点からは、視聴者の間で歴史的事実に対する誤認識や拒絶反応が起きており、特にムアウィヤを善として描くことへの反発が見られる。
最終的に、この作品は歴史的事実に基づかないとして多くの批判を受け、社会的な対立を招く恐れがあるとの声が強まっている。